子どもに成功体験を積ませたい。
私もそう思っている親の一人です。
成功体験とは「挑戦がうまくいくこと」だと思っていました。
だから、子どもが困らないように、失敗しないように、つい先回りしたくなる。
でも、2日間限定のカフェの挑戦を通して、その考えが変わりました。



【前回の失敗から学んだこと】



一昨年の夏、長女がマンゴーシェイク屋に挑戦したとき(その記録は前回の記事に書きました)、私は「全部自分でやること」が大事だと思い、見守ろうとしていました。

しかし、挑戦したからには、うまくいったという体験にしてほしいと思ってしまったのです。

私は気になってしまう。
焦ってしまう。
つい口を出す。
しまいにはちょっと手を出す。

なんとか成功させないと!
そんな焦りから、「全部子どもがやる」と決めたはずなのに、中途半端に口や手を出してしまう。

そして娘から「やっちゃってるじゃん。もう私、やらなくていいじゃん。」という言葉を聞くことになりました。

よく考えればそのはず。
初めてのことへのチャレンジは、概要ややり方を伝えるだけでは、子どもはなんとなくわかっても動くことができません。見ているこちらはもどかしいばかり。
しかも、子どもには得意不得意もある。
「全てやる」という考え方そのものに無理があったのかもしれません。


【全部やらなくてもチームの一員になればいい】


そんな経験と反省を経て、2度目のチャレンジがやってきました。
今年の春、長女ういと次女ここが、2日間限定のカフェに挑戦しました。

考え方、関わる姿勢を変えることにしました。

「子どもが全部やるのではなく、チームになる。」

カフェのチャレンジは、事前集客を一つとっても、ポスター作り、ポスター貼り、チラシ配り、勧誘、SNSなど多岐に渡ります。事前集客、会場との折衝、保険加入などのリスクヘッジ、試作、食材や資材の仕入れ、会場の設営、サイン作り、注文を取る、ドリンクを作る、お金の受け渡し、経理……これを中学生が全てやるのは至難の業です。

誰にだって得意なことと不得意なことがある。それは子どもも大人も同じ。
だから私は、曖昧な「見守る」という役割をやめることにしました。
私もチームの一員になる。彼女たちが不得意な部分、やらなくてもいい部分を私が担う。司令塔は彼女たちであり、そこには口を出さない。

それでも、親というのは難しいものですね。
初日、知人にこう言われました。
「舞さん、やっぱりお母さんだからね。体が前のめりになってるわ」

思わず笑ってしまいました。
口は出していない。手も出していない。でも、体は前のめり。
キッチンを前のめりに見ている自分に気づくのです。

何かあったらどうしよう。失敗したらどうしよう。
そんな気持ちが全身から出てしまうのでしょうね。
その言葉を聞いてから、あらためて自分のスタンスを見直しました。


【子どもたちが経験を自分のものにする】



例えば次女のここ。
彼女は自分のブレンドコーヒー豆を販売するネットショップの店長です。
今回も自分のオリジナルブレンドコーヒーを提供することがミッションです。

仕入れ先とのやり取りも本人。当日のマシンの説明を聞くのも本人。
私は横でもなく、遠目に見ているだけです。

正直、落ち着きませんでした。
一緒に説明を聞いておけば安心できる。何かあったときに助けられるかもしれない。
でも、今回、私はそれをやらないと決めました。

困ったら困ればいい。失敗したら失敗すればいい。それも含めて彼女の経験だから。
そう腹をくくりました。

すると、1日目の終わりにこんなやり取りがありました。

娘「この余っているコーヒー、どうしたらいいの?」
私「え? わからない」
娘「じゃあ自分で聞く!」

そして実際に、自分で聞いて、自分で解決していました。
私は何もしていない。この経験で、彼女にとってこの事業が、さらに自分ごとになったのだと思います。


【自分ごとになると、子どもはちゃんと考える】


もう一つ、今回子どもたちから教えられたことがあります。
「自分たちのお客さん」だからこそ、自分たちが一番考えているということです。

あるお客さんとの場面で、私はモヤモヤしていました。
あとで言った方がいいかな。どう伝えようかな。言わないほうがいいかな。
でも、ちゃんと学びにしてほしい。そんなことを考えていました。

すると、その日の振り返りで、二人の方から話し始めたのです。

「あそこは、もう少しこうした方がよかったよね」
「あのお客さんは、こう思っていた気がする」

言わなくても、ちゃんと見ている。ちゃんと考えている。そして、自分たちで改善しようとしている。
自分たちのお店だから、自分たちのお客さんだから、ちゃんと見ていたのだと思います。

危うく、私はまた先回りして口を出すところでした。
親の役割は気づきを与えることや教えることではなく、彼女たちがその場に当事者意識を持てるかどうかにある。そのことに気づかされました。


【成功体験は“挑戦の設計”から始まる】


今回、私が学んだのは、成功体験を積むためには、挑戦の大きさのデザインが大事だということです。

彼女たちが背負える大きさに挑戦を切り分けること。一番やらなければならないことに集中できるようにすること。
ピザを口の大きさに切るように、挑戦をちょうど良いサイズに——いや、ちょっと大きいくらいに。そして、うまく口に入らなくても、途中で切り直してあげないこと。

そして大事なことは、「子どもを信じる」という曖昧な心がけではなく、自分が不安になったときに手を出さないこと。
その不安は子どもの不安ではなく、私自身の不安なのですから。


【挑戦の成功、価値とは】


そして今回の大きな学びは、親の役割は、失敗も含めて、その経験を子ども自身のものにできるよう支えることだということです。
先回りすることも、放置することも、どちらも違う。
子どもが自分で考え、自分で決め、自分で振り返ることができる環境を整えること。
それが親の仕事なのだと気づきました。

今回の2日間で、子どもたちはたくさんの経験をしました。

お客様に来てもらう難しさ。
思うようにいかない悔しさ。
注文が重なったときの焦り。
疲れたときの衝突。
トラブル対応への緊張。
工夫する面白さ。
自分たちで改善する手応え。

売れたという経験はもちろん嬉しかったと思います。でも、売れたことが本当の意味での成功体験ではなかったのです。

この経験を終えたあと、次女がこう言いました。
「次は私も食品衛生管理責任者を取って、一人で挑戦してみたい」

その言葉を聞いたとき、私は思いました。
成功体験とは、その挑戦がうまくいくことではなく、「またやってみたい」と思えることなのかもしれません。

「次はこうしたい」「もっとやってみたい」
そんな気持ちが生まれること。

それこそが、子どもたちの挑戦の本当の価値なのだと思います。

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